2004年02月14日

専門知と公共知

〔専門性への信頼の崩壊〕
「専門的である」ということはかつては「信頼してよい」ということと同義のごとく感じられていた。そこには、「専門家」が一種のパターナリズムをもって専門知やそれにもとづく対処を示し、「素人」はこれに依頼するという関係があった。ところが、現在、専門的であることは必ずしもそのまま信頼できることだとはいえなくなった。
その信頼の不成立は、パターナリズム的な権威と依存とが成り立たなくなったという側面と、「専門知」自身の有効性が失われたという側面と、両面があると考えられる。そのうち後者について考えてみる。

かつて専門知が妥当性・有効性をもつされていたとすれば、それはどういうことか。

〔知の有効性〕
まずそもそも知の有効性とは、1a)知が事象の複雑さを覆いうるということである。逆に知が有効でないとは、1b)知が把握するにはその対象があまりに「複雑だ」ということである。問題は要するに複雑性だ。ただ、もう少しいうと、その複雑性は3つぐらいの側面からとらえられそうである。
すなわち、
 1.事象それ自身の複雑さ。
 2.(なすべき)認知の複雑さ。
 3.(なすべき)対処の複雑さ。
そして上の1a) 1b)は、知の側からみた1.の問題である。
 これに対して、2.の場合については、こんなことも考えられる。すなわち、事象そのものは始めから十分に複雑だったのだが、しかしそれでも、ある知が有効だと「されており」、有効でなくともその無効に気づかれなかったか、気づいても黙っていた、などといった場合。この場合は、言い換えれば、それが無効だという反証が汲み上げらるような言路の制度や装置がなかった、ということである。それまで大体のところでおさまり・おさめていたが、様々なデータが汲み上げられる装置が出来たので、馬脚を現すというか、それじゃだめとか、別の考慮すべき要素もあるじゃないか、ということになったのである(──それは、「装置」自体が存在するようになったせいかもしれないし、まったく限られ・高いコストでしかあり得なかった装置が、そうでない形で存在するようになったのかもしれない)。いずれにせよ、これは、「見る目」が深くなり広がった、ということである。が、かつては、見る目が、浅くて、限られていたので、妥当・有効だと見えていた、というわけである。
 3.の場合は、実践的な問題である。あるレベルでわかっているけれど、それをより実現にもたらすような応用的な知がないとか、リソースが足りないとか、現実を構成するにあたっての問題である。

〔専門知とは〕
さて「専門知」にもどると、そもそも専門知とはなぜ生まれたのだろう。

(工事中)

専門知の有効性とは、それが社会的現実に向かって広げ適用される際にだいたい「当たっていた」ということである。そのことは、おそらくは専門知の「専門性」が一般社会の「社会性」との間で連続的であったか、それとも「専門家」が、専門知を取り巻く部分、インターフェース、「社会的な様々な諸世界についての基礎的な知をある程度もって補っていたか、そのどちらかまたはその両方であろう。

〔専門人と教養人〕
マックス・ウェーバーは、20世紀の初めに、いまや、たましいの無い専門人の世界になる、と予言したのだったが、その予言の背後には、これまでは、知は人間的に陶冶された「教養人」によって把握し所有されていたが、今後はそうではなくなるという認識があり、また、従来は理性的なものによって社会はほぼつらぬかれていたが、今後はそうではなくなる、という考えがあったのではないだろうか。(いまテキストがないので、読み返すことができないが)。

〔汎神論的宇宙の解体〕
ただ、日本社会にかつて何時だろうと理性による統一があったとは到底思えない。しかし、共通の知ともいうべきものが感得されていた、とは言えるかもしれない。たとえば、一芸に通じるとその道が他に通ずる、という考えは広く抱かれていた。今でも、その考えの支持者は少なくないだろう。そのような考え方は、一種の汎神論的な世界図式にまで繋がり、結局は、理でみるのであれ気でみるのであれ一種の有機体的存在論・世界観のようなものにも逢着する。が、そこまで至らなくても、「経験の同型性」ともいうべきものが、そうした場合は社会に広がっていたのである。もちろん、世の中は単純ではないし、知の複雑さや階型性や次元はいつの世にもある。が、そうしたことを、人々の経験の成長や、達人性・熟達masteryが把握・吸収していた。だが、それができなくなったのである。

いかにそうならなくなったのか。技術知の独自の界域。発展。
(工事中)

なかなか公共知までたどりつかないが、この項、ぼつぼつ建築していく。



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